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令和8年度税制改正大綱から読み解く暗号資産(仮想通貨)の相続税への影響
目次
はじめに:申告分離課税化がもたらす相続実務への劇的変化と対策
今回の税制改正の目玉は「申告分離課税(20.315%)」の導入ですが、実はその真の価値は相続発生後の出口戦略が劇的に改善される点にあります。
本記事では、大綱の行間から読み解く相続税への影響を解説します。
※関連記事
暗号資産(仮想通貨)の分離課税はいつ導入される?最新税制改正の展望と実務への影響【2026年1月版】
本記事の結論(改正による相続実務への影響)
- 特定暗号資産は「上場株式」に近い扱いへ!: 評価方法や取得費加算の特例など、株式並みの利便性が期待されます。
- 相続人の所得税負担が大幅軽減: 分離課税化により、納税資金確保のための売却に伴う税負担が最大55%から20.315%へ引き下げられます。(特定暗号資産に限る)
- 「特定」と「それ以外(以下、「特定外暗号資産」)」の格差が決定的に: 制度の恩恵を受けられない草コインを相続することは、税務上の大きなリスクとなる可能性が残ります。
暗号資産税務の現状と今後の方針(法改正の骨子)
まずは、現在の法令と、令和8年度以降に予定されている方針を整理します。
| 項目 | 現在の法令(改正前) | 今後の方針 (令和8年度税制改正大綱) |
| 所得区分 | 原則、雑所得(総合課税) | 「特定」は譲渡所得等(申告分離課税) |
| 税率 | 15%〜55%(累進課税) | 「特定」の売買等は一律 20.315% |
| 損失の繰越 | 不可 | 「特定」のみ3年間の繰越控除を創設 |
| 特定外暗号資産 | すべて一律の扱い | 分離課税の対象外とし、厳しい制限を維持 |
相続税への影響予想
上記の改正指針に基づき、実際の相続税で想定される影響を専門家として予想します。
① 取得費加算の特例の適用(ポジティブ:◎)
- 予想: 特定暗号資産の売買が所得税法上の「譲渡所得」へ区分変更されることで、「取得費加算の特例(相続税額を取得費に算入できる制度)」が適用対象に含まれると予想されます。
- 理由: 譲渡所得であれば、上場株式と同様に租税特別措置法第39条の枠組みに無理なく組み込めるためです。これにより、相続後の売却にかかる所得税を大幅に圧縮可能になります。
② 相続開始時の評価方法の多様化(ポジティブ:○)
- 予想: 特定暗号資産の評価について、上場株式と同様に「相続開始月の前後3ヶ月の平均値」から最低値を選択できる仕組みが導入されると予想されます。
- 理由: ボラティリティの激しい暗号資産を「特定」として金融商品化する以上、一時的な高騰による過大な相続税負担を防ぐ「月平均価格」の導入は論理的な帰結といえます。
暗号資産(仮想通貨)の相続FAQ
Q1. 暗号資産を相続すると「110%課税」と呼ばれる二重課税のリスクはなくなりますか?
A1. 制度上、大幅に緩和される方向で調整が進んでいます。 これまでは「相続税」を払った後の売却益にさらに高額な「所得税(雑所得)」がかかる二重苦が問題でした。税制改正により、特定暗号資産については、分離課税(20.315%)が導入され、かつ「取得費加算の特例(相続税額を経費にする)」が解禁されれば、実質的な税負担は適正な範囲に収まると予想されます。
Q2. 海外口座や自己管理ウォレットのビットコインも「取得費加算」を使えますか?
A2. 「譲渡所得」に区分されれば、利用できる可能性が高いです。 大綱には、国内業者を通じない取引を「総合課税の譲渡所得」とする方針が示唆されています。この場合、税率は高いまま(最大55%)ですが、所得区分が「譲渡所得」となるため、支払った相続税を取得費に上乗せする「取得費加算の特例」は適用対象に含まれると予想されます。
Q3. 秘密鍵を紛失して引き出せない場合、相続税は0円にできますか?
A3. 現在の法令・通達には、秘密鍵を紛失した暗号資産の相続税評価に関する明文規定はありません。もっとも、ブロックチェーン上に資産が存在し、復元の可能性を完全には否定できない場合には、税務当局が簡単に「価値ゼロ」と認めるとは考えにくく、実務上は厳格な立証が求められると予想されます。
今回の税制改正大綱にも本件に関する直接の記載はなく、今後の解釈・通達や個別協議の積み重ねを注視する必要があります。
まとめ:今から取り組むべき相続対策
今回の法改正は、将来的に納税者にとって「特定暗号資産へ集約すること」が最大の節税・相続対策になることを示唆しています。
- 非特定暗号資産の整理: 分離課税や取得費加算のメリットを享受できないマイナーコインは、ビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの「特定」候補へ入れ替える。
- 取得費データの保存: 相続人は取得費(簿価)を承継します。古い取引データの紛失は将来の所得税増税に直結します。
弊所では、過年度の損益計算を通じて法改正を見据えた暗号資産のポートフォリオ診断および相続シミュレーションが可能です。ご家族に確かな資産を残すために、お早めにご相談ください。
※当記事は令和8年度(2026年度)税制改正大綱の内容に基づき、2026年4月時点の法律・通達等から今後の税務実務を予測したものです。
大綱は方針を示すものであり、今後の国会審議や政省令の制定により、実際の内容が大きく異なる可能性があります。また相続税関連はまだ大綱に明記されていない論点を含んでいます。そのため記載内容の正確性や将来の確定的な取り扱いを保証するものではございません。当記事を参考に何らかの行動をされる場合は、管轄の税務署・税理士をはじめとする専門家にご確認ください。
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