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2026年07月16日

暗号資産の分離課税はいつから?最大55%→20.315%になる取引を税理士が解説


CONCLUSION / この記事のポイント

  • 所得税法等の改正法公布(2026年3月)・金商法等改正法成立(2026年7月)により、制度の骨格が法制化された。
  • 分離課税の対象は「特定暗号資産」を「国内登録業者経由で譲渡した場合」に限定。銘柄と経路の両方が要件。
  • 海外取引所・DEXで直接売却した取引は原則対象外。ただし、海外取得後に国内業者へ移して売却した場合は対象となり得る。
  • 税率は合計20.315%。適用開始は2028年1月1日が有力だが、政令による施行日の確定を待つ必要がある。
  • ステーキング等の報酬は受取時(総合課税)と売却時(要件次第で分離課税)を別に判定する。
  • 対象銘柄・計算方法の細目は今後の政省令等で確定。

はじめに

2026年は、暗号資産(仮想通貨)の税制にとって歴史的な転換点となる年です。

2026年3月31日、「所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)」が公布され、暗号資産の申告分離課税の制度的な骨格が所得税法に組み込まれました。さらに、その前提となる金融商品取引法・資金決済法の改正法が2026年7月15日に成立し、制度の法的基盤が整いました。

現行制度では、暗号資産の利益は原則として「雑所得」として総合課税の対象とされ、他の所得と合算した金額によっては最大55%を超える税率が適用される場合があります。株式や投資信託(20.315%)と比べた不利な扱いが、ようやく是正されることになりました。

ただし、分離課税は「すべての暗号資産取引に一律に適用される」わけではありません。「特定暗号資産」に該当する銘柄を、国内の暗号資産取引業者を経由して譲渡すること――この2つの要件を満たさない取引は、引き続き総合課税の対象となる可能性があります。

本記事では、法制化された内容を正確に整理するとともに、実務上の留意点についても解説します。なお、対象銘柄の具体的な範囲や計算方法の細目は、今後公表される政省令等によって確定されます。最新の法令・通達を随時確認する必要があります。

この記事でわかること

  • 暗号資産の税負担が現行制度でなぜ重いのか
  • 申告分離課税の対象となる「2つの要件」(銘柄要件・経路要件)
  • 新制度が適用されない取引の具体例
  • ステーキング・DeFi報酬の取り扱いと、今から準備できる実務対応

1. 現行制度の概要

1-1. 暗号資産の利益は「原則として雑所得」

現行の所得税法では、暗号資産の売却益・交換益・使用益は原則として「雑所得」に分類され、給与所得や事業所得などの他の所得と合算して課税される「総合課税」の対象となっています(国税庁タックスアンサーNo.1524参照)。

ただし、取引の規模・継続性・帳簿書類の保存状況・営利性等によっては、「事業所得」に分類される場合があります。国税庁は、暗号資産取引の年間収入金額が300万円を超え、帳簿書類を保存している場合には、原則として事業所得として取り扱うことを示しています。

また、暗号資産取引で損失が生じた場合、同年の雑所得の範囲内で所得内通算できる場合がありますが、給与所得等の他の所得区分との損益通算は認められません。

1-2. 総合課税の税率(現行)

総合課税は累進税率が適用され、課税所得が多いほど税率が高くなります。

課税所得の合計所得税率住民税率合計税率
195万円以下5%10%15%
195万円超〜330万円以下10%10%20%
330万円超〜695万円以下20%10%30%
695万円超〜900万円以下23%10%33%
900万円超〜1,800万円以下33%10%43%
1,800万円超〜4,000万円以下40%10%50%
4,000万円超45%10%55%

※上表は所得税と住民税の本体税率です。付加税(復興特別所得税等)を含めた最高限界税率は約55.945%となります。

一方、株式・投資信託等の申告分離課税は一律20.315%であり、同じ「投資」でありながら暗号資産だけが不利な扱いを受けていました。

POINT / ポイント

例えば、暗号資産利益が生じる前から課税所得が4,000万円を超えている方が、追加で暗号資産利益1,000万円を得た場合、その1,000万円の全額に所得税・付加税・住民税を合わせて約55.945%の限界税率が適用されます。同じ1,000万円が申告分離課税の対象(株式等)であれば20.315%です。なお、年収と課税所得は異なります(給与所得控除・各種所得控除等があるため)。個人ごとの税額は状況によって大きく異なります。


2. 令和8年度税制改正の概要

2-1. 法制化の経緯

令和7年12月19日に与党が公表した「令和8年度税制改正大綱」で申告分離課税の方針が示され、その後以下の流れで法制化されました。

  • 2026年3月31日:「所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)」公布。特定暗号資産の譲渡等に係る申告分離課税の制度的な骨格が所得税法に規定されました。
  • 2026年7月15日:前提となる金融商品取引法・資金決済法の改正法が成立。「特定暗号資産」の概念を整備するための法的基盤が整いました。

残る主な不確定事項は、金商法改正法の政令による施行日、「特定暗号資産」の具体的な対象銘柄(財務省令等)、計算方法の細目などです。

2-2. 改正内容の骨子——3つの措置は別制度

今回の改正では、暗号資産に関連して以下の3つの措置が別個に講じられています。一つの制度としてまとめずに、それぞれを区別して理解することが重要です。

① 特定暗号資産の現物譲渡に係る申告分離課税(新設)
特定暗号資産を国内の暗号資産取引業者に売却・売委託した場合等について、他の所得と分離して20.315%で課税する、新しい課税制度の創設です。

② 暗号資産デリバティブへの既存制度の拡充
既存の「先物取引に係る雑所得等の分離課税制度」に、一定の暗号資産デリバティブ取引を追加する措置です。①とは別の課税制度が適用されます。

③ 特定暗号資産に係る投資信託の課税整備
特定暗号資産を投資対象とする一定の投資信託の受益権について、上場株式等と同様の課税措置を講ずる整備です。国内での対象商品の具体的な範囲は今後の政省令等で確定されます。

EXPERT NOTE / 実務メモ

①②③はそれぞれ制度が異なり、適用要件も個別に確認が必要です。「暗号資産の取引が全部20.315%になる」という理解は不正確です。自身の取引がいずれに該当するかは、取引の種類・経路ごとに判断する必要があります。


3. 分離課税の2つの要件:対象資産と譲渡経路

3-1. 銘柄要件と経路要件の両方が必要

①の申告分離課税(現物譲渡)の対象となるためには、次の2つの要件をどちらも満たす必要があります。

要件1|「特定暗号資産」であること
「特定暗号資産」とは、金融商品取引業者の登録簿にその名称が登録されている暗号資産のうち、財務省令で除外されるものを除いたもの等を指します。

  • 「国内取引所が現在取り扱っている銘柄の全部」と同一ではありません
  • 財務省令による除外・追加がある場合があります
  • 具体的な対象銘柄の範囲は、今後の政省令等で確定されます

要件2|対象となる経路で譲渡すること
暗号資産取引業者(国内の登録業者)への売却または売委託など、法律上定められた方法による譲渡であることが必要です。

CAUTION / 注意

「特定暗号資産に該当する銘柄を売れば分離課税になる」とは限りません。対象銘柄であっても、海外取引所やDEXで直接売却した場合は、分離課税の対象外となる可能性が高いと考えられます。「どの銘柄を」「どの経路で」譲渡したか、両方が要件です。

3-2. 譲渡経路別の整理

取引の形態改正後の取り扱いの方向性
特定暗号資産を国内登録業者に売却・売委託申告分離課税 20.315%(対象)
海外取引所で直接売却・交換原則として対象外
DEXで直接スワップ原則として対象外
個人間取引(P2P)・店舗での直接決済原則として対象外
海外取引所等で取得後、国内登録業者に移して売却要件を満たせば対象となる可能性がある
国内取引所で取得後、DEXに移してスワップ原則として対象外

POINT / ポイント

重要なのは「どこで取得したか」ではなく、「最終的に国内の登録業者を通じて売却したか」です。海外取引所で取得したビットコインでも、国内の暗号資産取引業者に移して売却すれば、銘柄・経路の両要件を満たす場合には分離課税の対象となります。一方、国内取引所で購入した暗号資産をDEXに移してスワップした場合は、対象外となります。


4. 新制度の主なメリット

4-1. 税率の引き下げ

新制度の最大のメリットは、対象取引に係る税率の引き下げです。合計税率は20.315%(所得税・付加税15.315%、住民税5%)となります。なお、2028年以後は防衛特別所得税の導入と復興特別所得税率の変更がありますが、合計税率20.315%は維持されます。

試算例(前提を明示した比較)
暗号資産利益が生じる前から課税所得が4,000万円を超えており、追加で生じた暗号資産利益1,000万円の全額が最高税率帯に入ると仮定した場合の概算比較です。

制度適用税率(概算)税額(概算)
現行制度(総合課税・最高限界税率帯)約55.945%約559万円
改正後(申告分離課税・対象取引の場合)20.315%約203万円

※課税所得・各種控除・他の所得等により実際の税額は異なります。あくまで参考値としてご覧ください。

4-2. 損失の繰越控除(3年間)

新制度では、特定暗号資産の取引(分離課税ルート)で生じた損失を、翌年以後3年間繰り越して将来の利益と相殺できる仕組みが設けられます。

現行制度では翌年以後への繰越はできないため、株式の譲渡損失(3年間繰越可能)と比べて不利な扱いが続いていました。

繰越控除のイメージ(例)

  • 2028年:△500万円の損失 → 確定申告で繰越控除の適用を受ける
  • 2029年:+800万円の利益 → 繰越損失500万円と通算後、課税対象は300万円

POINT / ポイント

繰越控除を適用するためには、損失が生じた年も含め毎年確定申告を行う必要があります。申告を失念した年があると繰越の権利が失われます。また、現行制度(新制度施行前)に発生した損失が、施行後に自動的に繰り越されるわけではありません。繰越控除は、新制度の適用開始後の取引で生じた損失が対象です。

4-3. 取引報告制度の整備

現在も国内の暗号資産交換業者から利用者向けに「年間取引報告書」が発行されていますが、これとは別に、新制度では暗号資産取引業者から税務署への法定報告制度が整備される予定です。

ただし、これは証券会社の「源泉徴収あり特定口座」と同様の制度ではありません。特に外部ウォレットから入庫した暗号資産については、取引業者が取得価額を把握できないため、損益計算がすべて自動化されるわけではありません。申告の手間が一部軽減される可能性はありますが、自身での記録整備は引き続き重要です。

また、法定報告制度の対象取引は分離課税の適用開始の翌年からとなる見込みであり、分離課税開始と同時に整備されるわけではありません。


5. 新制度が適用されないケース

5-1. 引き続き総合課税が適用される取引

以下の取引については、改正後も総合課税のままとなります。

1. 海外取引所・DEXでの直接売却・交換
海外取引所(Binance、Bybit等)やDEX(Uniswap等)で直接売却・スワップした取引は、法律上の要件である「国内の暗号資産取引業者への売却等」には該当しません。ただし、海外取引所等で取得した暗号資産を国内の暗号資産取引業者に移して売却した場合には、銘柄要件・経路要件を満たせば分離課税の対象となります。「海外取引所を利用したことがある」というだけで一律に対象外になるわけではありません。

2. 「特定暗号資産」に該当しない銘柄
すべての暗号資産が特定暗号資産となるわけではありません。金融商品取引業者の登録簿に名称が登録されていない暗号資産や、財務省令で除外された銘柄については対象外となります。具体的な対象銘柄の範囲は今後の政省令等で確定されます。

3. P2P取引・店舗での直接決済等
個人間の直接取引や、店舗・サービスでの決済についても、「国内の暗号資産取引業者への売委託等」には通常該当しないと考えられます。


6. ステーキング・マイニング・DeFi報酬の取り扱い

6-1. 「報酬の取得時」と「取得後の売却時」は別に判定する

ステーキング、マイニング、レンディング、DeFiによる報酬については、取得時と売却時の課税を分けて考える必要があります。

(1)報酬を取得した時点の課税
ステーキング報酬・マイニング収入・DeFiの利息等を暗号資産として受け取った時点では、今回の「特定暗号資産の譲渡に係る申告分離課税」の対象にはなりません。受け取った時点の時価相当額が収入金額として計上され、原則として総合課税(雑所得または事業所得)の対象となります(現行制度と同様)。

(2)報酬として取得した暗号資産を後日売却した場合
報酬として取得した暗号資産を、後日、国内の暗号資産取引業者に売却する等の方法で処分した場合には、その時点で別途、「譲渡」として課税関係が生じます。この際、売却価額から取得価額(受取時の時価相当額)を控除した値上がり益の部分について、銘柄要件・経路要件を満たせば分離課税の対象となる可能性があります。

EXPERT NOTE / 実務メモ

ステーキング報酬を受け取ったからといって、その後の売却益がすべて総合課税になるわけではありません。「受取時の課税(総合課税)」と「売却時の課税(要件次第で分離課税の可能性)」を分けて考えることが重要です。なお、DeFiにおけるLP(流動性提供)の解除、トークンのスワップ、再ステーキング等については、それぞれの取引の性格・タイミングを個別に判定する必要があります。詳細は国税庁の通達・FAQの公表をお待ちください。


7. 施行スケジュールと未確定事項

7-1. 適用開始は「2028年1月1日」が有力な見込み

改正所得税法では、申告分離課税の適用開始を「金融商品取引法改正法の政令で定める施行日の属する年の翌年1月1日以後に行う譲渡等」と定めています。

2026年7月15日に金商法・資金決済法の改正法が成立しました。施行日は政令で定められますが、2027年中に施行された場合、申告分離課税の適用は2028年1月1日から開始される見込みです。ただし、施行日は政令が確定するまで確定日としては取り扱えません。

スケジュール(現時点の想定)

時期イベント
令和7年12月19日与党が令和8年度税制改正大綱を公表
2026年3月31日「所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)」公布
2026年7月15日金融商品取引法・資金決済法の改正法が成立
2027年(予定)金商法改正法の政令による施行日が決定
2028年1月1日(有力な見込み)特定暗号資産の現物譲渡に係る申告分離課税が適用開始
2029年1月1日以降(予定)法定取引報告制度の対象取引の開始
2030年1月31日まで(予定)最初の法定報告書の提出期限

EXPERT NOTE / 実務メモ

現時点で確定していない主な事項は以下のとおりです。①金商法改正法の政令による具体的な施行日、②「特定暗号資産」の具体的な対象銘柄・除外銘柄(財務省令等)、③ステーキング・DeFi等の各種取引の詳細な取り扱い(国税庁通達・FAQ等)、④同一銘柄を複数経路で取得している場合の取得価額の計算方法の細目。これらは今後公表される政省令・通達等を随時確認する必要があります。


8. 今からできる実務対応

8-1. 制度施行に向けて準備できること

適用開始まで一定の時間がありますが、できることから準備を進めておくことが有益です。ただし、個別の売買判断・移行判断は状況によって大きく異なります。以下は一般的な準備事項として参考にしてください。

① 取引記録の整備・集約
どの取引所・ウォレットで、いつ、何を、いくらで売買・取得したかの記録を整備しておきましょう。特に以下の情報が重要です。

  • 取引履歴のCSVエクスポートと保管
  • 国内取引所・海外取引所・DEXごとの取引の分類
  • ステーキング報酬・エアドロップ等の受取記録と受取時の時価

② 自身の取引の全体像を把握する
国内取引所・海外取引所・DEX・ウォレット間の資産移動を整理し、「どの取引が将来的に分離課税ルートに乗り得るか」の全体像を把握しておくことが有益です。ただし、政省令等の詳細が確定する前に「分離課税になる」と断定するのは時期尚早です。

③ 法人設立・法人化の再検討
現在、法人で暗号資産投資を行っている方や法人化を検討している方は、新制度との兼ね合いで最適な事業形態を改めて検討することをお勧めします。法人と個人の比較は、税率だけでなく、以下の要素を総合的に考慮する必要があります。

  • 国税である法人税の基本税率(23.2%)に加え、法人住民税・法人事業税・地方法人税等を含めた実効税率(財務省資料では標準的な大法人の実効税率は約29.74%とされています)
  • 暗号資産の期末時価評価課税の有無
  • 欠損金の繰越控除の活用可能性
  • 役員報酬・配当として個人に資金を移す際の課税
  • 法人の維持コスト(決算費用等)

POINT / ポイント

施行前の売却・保有継続のどちらが有利かは、市場価格、取得価額、他の所得の状況等によって個人ごとに大きく異なります。対象銘柄・計算方法が政省令で確定した段階で、個別の状況を踏まえて検討するのが現実的です。


9. よくある質問(FAQ)

Q1. 現在保有しているビットコインにも新制度は適用されますか?

A. 改正法では、適用開始日以後に行う特定暗号資産の譲渡に新制度が適用されます。適用開始日前に取得したビットコインであっても、適用開始日以後に分離課税の要件(銘柄要件・経路要件)を満たす方法で売却した場合には、新制度の対象となります。なお、取得価額については従前の取得価額を引き継ぐことが基本と考えられます。取得価額にリセットが生じるわけではないため、過去の取得履歴・取得価額を示す資料を保存しておくことが重要です。

Q2. 海外取引所(Binance、Bybitなど)で取得した暗号資産はどうなりますか?

A. 取得した場所ではなく、最終的に国内の登録業者を通じて売却したかどうかが重要です。海外取引所で直接売却・交換した場合は、分離課税の対象外となります。一方、海外取引所で取得した暗号資産を国内の暗号資産取引業者に移して売却した場合には、銘柄要件・経路要件を満たせば分離課税の対象となります。

Q3. ステーキング報酬・DeFiの利息も20.315%になりますか?

A. 報酬を受け取った時点の所得(取得時の時価相当額)は、今回の申告分離課税の対象ではなく、原則として総合課税(雑所得または事業所得)となります。一方、受け取った特定暗号資産を後日、国内の暗号資産取引業者に売却した場合には、取得後の値上がり益部分について分離課税の対象となります。「受取時の課税」と「売却時の課税」を分けて考えることが重要です。

Q4. 損失の繰越控除はいつから使えますか?

A. 新制度の適用開始(2028年1月1日が有力な見込み)以後の取引で生じた損失(分離課税ルートの損失)から、3年間の繰越控除が適用される見込みです。現行制度下で発生した損失が、施行後に自動的に繰り越されるわけではありません。また、繰越控除の適用には、損失が生じた年も含め毎年確定申告を行う必要があります。

Q5. 新制度の施行後は確定申告が不要になりますか?

A. 原則として確定申告は引き続き必要です。将来的に法定取引報告制度が整備されれば申告手続きの一部が簡素化される可能性はありますが、これは証券会社の「源泉徴収あり特定口座」と同様の制度ではありません。特に外部ウォレットから入庫した暗号資産の取得価額の把握など、ご自身での記録整備が引き続き重要となります。

Q6. 法人で暗号資産投資をしている場合も分離課税になりますか?

A. 今回の申告分離課税は個人の所得税を対象とした制度です。法人の場合は引き続き法人税等の規定が適用されます。法人と個人の比較は、税率(実効税率)だけでなく期末時価評価課税・繰越控除・資金回収時の課税・維持コスト等を総合的に検討する必要があります。個別の事情によって結論は異なります。

Q7. NFTの売買も分離課税になりますか?

A. 一般的なNFTは資金決済法上の暗号資産とは異なる場合が多く、今回の「特定暗号資産」に係る申告分離課税には原則として含まれません。ただし、トークンの機能・流通状況によっては暗号資産または有価証券に該当するケースもあり得るため、個別判定が必要です。NFT取引の課税関係については、引き続き国税庁の公表資料や通達の動向を注視する必要があります。


10. まとめ

2026年3月31日の改正所得税法の公布に続き、同年7月15日に金商法・資金決済法の改正法も成立し、暗号資産の申告分離課税について制度の骨格が整いました。

ただし、「暗号資産の利益がすべて20.315%になる」という理解は正確ではありません。分離課税(現物譲渡)の対象となるためには、①「特定暗号資産」に該当することと、②国内の暗号資産取引業者を経由した譲渡であることの両方が必要です。

海外取引所やDEXで直接取引した場合は対象外となる可能性が高い一方、海外等で取得した暗号資産を国内業者を経由して売却した場合には対象となり得ます。ステーキング等の報酬についても、「受取時」と「売却時」を分けて考えることが実務上重要です。

対象銘柄の具体的な範囲、計算方法の細目、各種取引の取り扱いは、今後公表される政省令・国税庁通達等を確認する必要があります。対象銘柄・計算方法の細目が政省令等で確定した段階で、個別の状況を踏まえた対応を検討することをお勧めします。


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【免責事項】本記事は2026年7月16日現在の法令・通達・国税庁FAQに基づく一般的な税務情報の提供を目的としており、特定の銘柄や取引の推奨・投資助言ではありません。金商法改正法の施行日、対象銘柄の具体的範囲、計算方法の細目等は、今後の政省令・通達等によって変更・確定される可能性があります。実際の税務判断は個別の事実関係により異なるため、必ず税理士へご相談ください。

執筆:菊地貴加志(公認会計士・税理士)|ホワイトテック会計事務所 公開日:2026年7月/最終更新日:2026年7月16日
参考:所得税法等の一部を改正する法律(令和8年法律第12号)(2026年3月31日公布)、令和8年度税制改正大綱(令和7年12月19日与党公表)、金融商品取引法・資金決済法改正法(2026年7月15日成立)、国税庁「暗号資産等に関する税務上の取扱い及び計算書について(令和7年12月)」

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