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2023年04月26日

NFTには、どんな税金がかかる?所得税・法人税・消費税・相続税について、解説します。

国税庁がNFTに関する税務上の取り扱いについて(FAQ)令和5年1月13日に公表

今までのNFTに関する税務

今までのNFTに関する国税庁からの発信は令和4年4月にタックスアンサーとして公表されたもののみでした。

内容としては、NFTを用いた取引が所得税の課税対象となるのか、また課税対象となる場合の所得区分はどのようになるのかが簡潔に述べられているに留まっており、消費税、相続税などの課税関係については明記されていませんでした。

▼令和4年4月国税庁発表「NFTやFTを用いた取引を行った場合の課税関係」

https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1525-2.htm

NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)とは

FAQとは、NFTに関する税務上の一般的な取扱いについて、質疑応答形式で取りまとめられたものです。

当事者の属性や取引形態によってどのような課税関係が生じるのかが、税目毎に計15問掲載されています。FAQは、国税庁が税務職員の執務の参考になるように取りまとめられたもので、法令や通達ではありません。

しかしながら、NFT取引はこれまでになかった形の取引であり、法令や判例もないことから、税務上の判断を行う上で参考となるものになります。

▼令和5年1月国税庁発表「NFTに関する税務上の取扱いについて(FAQ)」

https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/shotoku/shinkoku/0022012-080.pdf

NFTとは

FAQでの定義

NFT(Non-Fungible Token)とは、ブロックチェーン上で、デジタルデータに唯一の性質を付与して真贋性を担保する機能や、取引履歴を追跡できる機能をもつトークンをいいます。

デジタルアートではない

NFTはデジタルアート等のコンテンツそのものではなく、コンテンツに紐づけることで資産的価値のあるものとなります。

著作権との関係

コンテンツ制作者の利益を保護するための法律上の権利として著作権があります。

デジタルデータの複製は著作権法によって規制されていますが、複製自体を防止するのは事実上困難と考えられています。

しかしながら、NFTにより、デジタルデータに証明書を付与することで、希少価値を持たせ、権利の保護を図るための技術的な仕組みが確保されました。

ただし、NFT保有者が当然に著作権を保有しているというわけではなく、デジタルデータを利用する場合は、NFTの作成者から著作権の譲渡をNFTの譲渡とは別に受けるか利用許諾を受けることになります。

暗号資産との関係

NFTと暗号資産はともに、ブロックチェーンを通じてその取引の信頼性が担保されている点が共通点になります。

一方、相違点として、NFTが代替不可能な1点ものの資産であるのに対して、暗号資産は同じ銘柄であれば単位当たりの価値が等しい代替可能な資産です。

その結果として、NFTは時価を観察することが通常難しく、暗号資産は比較的容易である場合が多いです。

税目別に解説

所得税

収入金額の算定

個人がNFTを販売、転売したことにより得た利益は、所得税の課税対象となります。

収入金額の算定は、売却の対価として暗号資産やトークンを受領している場合は、原則的には受領時の時価で収入金額を計算することになります。

ただし、対価として受領した暗号資産やトークンについて時価の算定が困難である場合は、売却したNFTの取得費等を収入金額としてよいことになっています。

所得区分と必要経費

販売、転売による利益は、個人の属性や取引状況により、以下の4つのいずれかの所得区分に該当し、必要経費の範囲等の違いから税額に影響を与えます。

①譲渡所得(短期or長期)

②雑所得(その他)

③雑所得(業務)

④事業所得

①譲渡所得(短期or長期)

NFTを単発的に取得し転売した場合が挙げられます。

・取得費や譲渡費用(ex.ガス代)、特別控除額を収入金額から差し引いて所得を計算
・保有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得となり、税金計算上有利となる

②雑所得(その他)

NFTを単発的に製作販売している場合が挙げられます。

・取得費や譲渡費用等、収入を得るために直接要したもののみが必要経費として認められる
(販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用は認められない)

③雑所得(業務)

NFTを継続的に制作販売または転売しているが事業に該当しないもの等が挙げられます。

・取得費や譲渡費用の他、販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用を収入金額から差し引いて所得を計算

④事業所得

事業として認められるもの(つまり営利性、継続性のみならず労力の度合い、その他の所得とのバランス、社会通念上認められるか等の要件を満たすもの)が該当することになります。

・③と同様、取得費や譲渡費用の他、販売費、一般管理費その他その所得を生ずべき業務について生じた費用を収入金額から差し引いて所得を計算
・青色申告が可能であり、青色申告特別控除、損失の3年間繰越等を活用できる
(ただし、事前の届出、記帳、帳簿保存等が必要。)

所得税基本通達の形式基準

NFTから生じる所得については、その区分によって税金の計算が大きく異なります。
しかし、どの所得区分にするかについてはハッキリとした基準がないため、どの所得とすべきか判断に迷うこともあるかもしれません。

その場合は、所得税基本通達で示されている形式基準が役に立ちます。

令和4年10月に国税庁より発表された所得税基本通達の一部改正によると、収入金額(not利益)が300万円を超えるかどうかで①譲渡所得③雑所得(業務)のどちらとなるかを判断することになります。

また、④事業所得となるかの形式要件は帳簿保存の有無となりますが、判例によって示されている営利性、継続性等の実質的な要件を無視してよいわけではないので注意が必要です。必ず専門家にご確認ください。

▼令和4年10月国税庁発表「所得税基本通達の制定について」の一部改正について(法令解釈通達)

https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/shotoku/kaisei/221007/index.htm

法人税

課税の対象と計算方法

法人がNFTを販売、転売したことにより得た利益は、法人税の課税対象となります。

益金の額の測定は、引き渡すNFTの時価で行います。

法人の場合は、個人の所得税と異なり所得区分を検討する必要がないため、比較的シンプルといえます。

期末評価

NFTの期末の時価評価については、暗号資産とは異なり基本的に必要ないと考えられます。

暗号資産については、一定の要件を満たす場合には時価評価の対象となると法人税法で定められています。
他方で、NFTについてはそのような定めはなく、活発な市場が存在するかが問題となりますが、NFTは代替不可能な1点ものの資産であり、金、銀、白金のような商品とは異なり、活発な市場が存在しない場合がほとんどであると思われます。
そのため、NFTは時価評価の対象となる資産に該当する可能性は低いと考えられます。

消費税

一次流通と二次流通

事業(業務を含む)として行われるNFTの製作販売や転売には、原則として消費税が課税されます。
そのため、課税事業者となる要件の一つである課税売上高1,000万円超の売上があれば納税義務者になることになります。

また、既に課税事業者であり簡易課税を選択している場合も、税額に影響を与えることになるため転売(二次流通)については特に注意が必要です。

内外判定(国内取引か国外取引か)

NFTの譲渡は「電気通信利用役務の提供」に該当した場合、内外判定は役務提供を受けるものの住所等により行われます。
そのため、内外判定をするために、相手先の住所(どの国か)を把握する必要があります。
しかし、NFT取引所においては通常、取引相手の住所を知ることは難しく、実務上の課題といえます。

相続税

評価方法

評価通達に定めがないことから、評価通達5(評価方法の定めのない財産の評価)に基づき、評価通達に定める評価方法に準じて評価することになります。
例えば、書画骨とう品の評価に準じて売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価するというものです。
この場合、評価を一意的に決定するのは難しく、高すぎるまたは低すぎる評価額となってしまうリスクがあります。

そのため保守的な方法として、相続人全員の合意のもと相続財産を売却し、その売却額をもって評価額とすることが考えられます。

また、NFT制作に関して印税(Royalty)が発生している場合は、著作権の評価に準じて評価を行うことが考えられます。

まとめ

NFTに係る税務に関して、現行の税法には明記されていないものが多くあります。
FAQ等の情報をキャッチアップすることで備えつつ、今後の税法改正により明確な取り扱いが図られることを期待したいところです。

※当記事は2023年4月時点の情報に基づいて記載しております。現時点で判明している法律・通達等に基づいて記載しておりますが、正確性等を保証するものではございません。当記事を参考に何らかの行動をされる場合は、管轄の税務署・税理士をはじめとする専門家にご確認ください。

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