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財産債務調書の提出が漏れていませんか?暗号資産(仮想通貨)
所得税の確定申告は所得を申告するのみで、相続税などと違って所有する財産の情報を開示するようなことは、基本的にはありません。
ただ、所得税の確定申告とは別に、暗号資産(仮想通貨)の保有状況を税務署に知らせないといけない制度があることは、ご存知でしょうか?
今回は、その「財産債務調書制度」について、制度の内容やどんな人が提出の対象となるのか、もし財産債務調書を提出しなかった場合にはどうなるのかなど、財産債務調書制度と暗号資産(仮想通貨)について、お話していきたいと思います。
財産債務調書って、知っていますか?
あまり馴染みのないもの、かつ、要件水準が高く、この制度を知らない人も多いようです。
財産債務調書制度とは、所得税の確定申告の際に一定の要件を満たした人は、個人財産の詳細を記した「財産債務調書」を提出しなければならないという制度です。
(平成27年分の所得税の確定申告から義務付けられています。)
この財産債務調書制度ができる前から「財産及び債務の明細書」という提出制度はありました。
「財産及び債務の明細書」の提出制度に比べると、その記載事項がより具体的になり罰則規定も設けられるなど、以前とは意味合いが大きく異なるものとなっており、税務署側が資産家の財産状況を把握することに力を入れていることが伺えるのではないでしょうか。
財産債務調書制度は、所得税・相続税の申告の適正性を確保する観点から財産及び債務の明細書の提出制度を見直したものと言われています。
また、財産債務調書制度に似た名称の制度として、「国外財産調書制度」というものがあります。
国外財産調書制度とは、その年の12月31日の時点で、国外財産の合計額が5,000万円を超える居住者は、翌年の3月15日までに「国外財産調書」に「国外財産調書合計表」を添付して提出しなければならないというものです。
ただし、暗号資産(仮想通貨)の場合、財産の所在地判定は、「その財産を有する者の住所(住所を有しない場合は居所)」であり国内財産となるため、国外財産調書の記載対象ではなく、財産債務調書の記載対象となりますので、注意が必要です。
提出しなければならない人とは?提出期限は?
財産債務調書を提出の対象となる要件は、所得税及び復興特別所得税の確定申告書を提出しなければならない方で、その年分の総所得金額及び山林所得金額の合計額が2,000万円を超え、かつ、その年の12月31日において、その価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の国外転出特例対象財産を有する方とされています。
なお、ここで言う国外転出特例対象財産とは、所得税法第60条の2第1項に規定する有価証券等、同条第2項に規定する未決済信用取引等及び同条第3項に規定する未決済デリバティブ取引に係る権利を指します。
難しい表現ばかりでよくわからないですね。。
少し要約すると、
- 所得税の確定申告書を提出している
- 所得金額の合計額が2,000万円を超える
- その年の12月31日時点で、時価3億円以上の財産、又は、時価1億円以上の国外転出特例対象財産を保有している
これらのすべてを満たす人は注意が必要だと思ってください。
そして、これらの条件を満たす人は、保有する財産の種類・数量・所在地・金額などを記載した財産債務調書と、財産債務調書に記載した財産債務を種類ごとに集計した財産債務調書合計表を、その年の翌年3月15日までに提出しなければなりません。
提出要件に当てはまっているにも関わらず、この制度を知らずにうっかり提出漏れが発生しないよう注意しましょう。
仮想通貨・暗号資産の記載の仕方は?
前項の要件を満たし、財産債務調書を提出しなければならなくなった場合、暗号資産(仮想通貨)については、どのように記載をすればよいのでしょうか。
暗号資産(仮想通貨)は、財産の区分のうち、「その他の財産」に該当し、財産債務調書には、暗号資産(仮想通貨)の種類別(BTC,ADA等)、用途別及び所在別に記載します。
なお、ここで言う所在とは、その財産を有する者の住所(住所を有しない場合は居所)であり、暗号資産(仮想通貨)取引所の所在ではないことに注意が必要です。
次に、暗号資産(仮想通貨)の価額ですが、活発な市場が存在する場合には、財産債務調書を提出する方が、取引を行っている暗号資産(仮想通貨)交換業者が公表するその年の 12 月 31 日における取引価格を時価として記載します。
また、時価の算定が困難な場合には、その年の 12 月 31 日における暗号資産(仮想通貨)の状況に応じ、その暗号資産(仮想通貨)の取得価額や売買実例価額などを基に、合理的な方法により算定した価額を見積価額として記載します。
提出しなかったらどうなるの?ペナルティは?
財産債務調書制度には、提出をしなかった場合の罰則規定が定められています。
財産債務調書の提出が提出期限内にない場合、又は、提出期限内に提出された財産債務調書に記載すべき財産又は債務の記載がない場合(重要なものの記載が不十分と認められる場合を含みます。)に、その財産又は債務に関して所得税の申告漏れが生じたときは、過少申告加算税等が5%加重されることになります。
通常、過少申告加算税は、不足している税額×10%(新たに納める税額が当初の申告納税額と50万円とのいずれか多い金額を超えている場合、その超えている部分については15%)となるため、最大で20%の過少申告加算税が課されることになります。
逆に、適正な財産債務調書を提出期限内に提出した場合には、財産債務調書に記載がある財産又は債務に関して所得税・相続税の申告漏れが生じたときであっても、過少申告加算税等が5%軽減されるといったメリットがあります。
まとめ
財産債務調書を提出しなかったからといって、即ペナルティになるわけではないものの、要件に該当した場合は、提出漏れにならないように気をつけましょう。
また、財産債務調書には暗号資産(仮想通貨)以外にも、土地、建物、現金、預貯金、有価証券、貸付金、未収入金、書画骨とう美術工芸品、貴金属類、動産、保険の契約に関する権利、株式に関する権利、その他の財産等を記載しなければなりません。
これらの財産の洗い出しや、それぞれの価額(時価又は見積もり価額)の算出も大変な作業になりますので、余裕を持って事前に準備するようにしましょう。
※当記事は2020年4月時点の情報に基づいて記載しております。現時点で判明している法律・通達等に基づいて記載しておりますが、正確性等を保証するものではございません。当記事を参考に何らかの行動をされる場合は、管轄の税務署・税理士をはじめとする専門家にご確認ください。
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