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2019年11月23日

最新版!2019年仮想通貨に関する所得税法改正の要点を解説します

仮想通貨の所得税法が一部改正されました。そこで本記事では下記のような疑問にお答えします。

「2019年度の確定申告までにどうすればいい?」

「所得税法の改正で仮想通貨はどうなる?」

「仮想通貨の売却額の5%を取得原価にできる?」

「移動平均法を選択する場合は届出書が必要なの?」

今回の改正により、取得原価が不明な仮想通貨であっても、売却額の5%を取得原価として算入できるように、一部の仮想通貨保有者には有利になる改正がありました。

その一方で、仮想通貨の評価方法で移動平均法を選ぶ場合は、事前に届出書の提出を求められます。

2019年仮想通貨に関する所得税法の改正の要点

仮想通貨に関する所得税法の改正の大きな要点を2つにまとめました。

  1. 売却額の5%を取得原価として計上できる
  2. 移動平均法を選ぶ場合は届け出が必要

それぞれ説明します。

売却額の5%を取得原価として計上できる

仮想通貨の売却額の5%を取得原価として計上できるようになりました

たとえば1万円で購入した1BTCが100万円で売れたとしましょう。このときの取得原価は1万円ですよね。

しかし、今回の改正により「取得原価5%ルール」を適用した場合には、取得原価を5万円で計上できるようになります。

このように仮想通貨の取得原価が不明もしくは小さいときは「取得原価5%ルール」によって、課税所得が小さくなるケースが発生します。なおハードフォーク等により無償で手に入れた仮想通貨にも「取得原価5%ルール」が適用されるかは、現時点では明らかになっておりません。

ここからは弊所の見解になりますが、この改正について納税者側の視点では得になるようなものではないと考えています。

理由は2つあります。

1つめは売却額の5%「しか」取得原価として計上できないことです。

仮想通貨バブルの際には数百倍となる仮想通貨も誕生していたため、5%基準が得になるようなこともあったかもしれませんが、現時点の市況で売却額の5%を適用して得になるようなケースはほとんどないと考えています。(2017年以前から仮想通貨を購入して取得原価が低いまま保持しているケースを除く)

2つめは売却した仮想通貨の取得原価が不明な場合に、この税法を根拠に5%基準で計算する必要が生じてくるためです。今までは、税法が明確に整備されていなかったこと、また取引所固有の問題によりデータに誤りがある・取得ができない・欠落していることが生じてしまうこともあり、実務上100%正確な計算が難しいケースもありました。ただしこのような場合でも、今後は取得原価が不明な場合に該当し、5%基準で取得原価を算定する必要があると、税務調査時に主張される可能性があるためです。

移動平均法を選ぶ場合は届け出が必要に

仮想通貨の評価方法には、移動平均法と総平均法があるのですが、移動平均法を選択したい場合は事前の届け出が必要になりました

また移動平均法を一度選ぶと、原則として3年間は評価方法を変更できなくなります

と、言われても「どちらの評価方法を選べばいいのかわからない…」という方が多いと思いますので、移動平均法と総平均法の計算方法を簡単に説明したいとおもいます。

移動平均法と総平均法の計算方法の違い

移動平均法と総平均法の違いはこちらです。

  • 移動平均法:仮想通貨を取得するたびに単位あたりの取得原価を計算
  • 総平均法:1年間の購入額と購入量から単位あたりの総平均取得原価を計算

このままだとわかりづらいと思いますので具体例を出しながら説明させてください。

たとえば下記のような仮想通貨の取引があったとしましょう。

3/1、1BTCを50万円で購入

4/1、1BTCを30万円で購入

5/1、1BTCを55万円で売却

6/1、1BTCを45万円で売却

12/31、1BTCを10万円で購入

移動平均法で計算を行う場合、仮想通貨を取得するたびに取得原価を計算しますので、1BTCあたりの取得原価は、(50万+30万)÷2BTC=40万円/BTCになります。

そして所得は売上-取得原価でもとめるので、(55万+45万)-(40万円×2BTC)=20万円です。

一方で総平均法では、年間の購入額と購入量から取得原価を求めるので、1BTCあたりの取得原価は(50万+30万+10万)÷3BTC=30万円/BTCになります。

所得は(55万+45万)-(30万円×2BTC)=40万円です。

まとめると、総平均法のほうが移動平均法よりも20万円所得が多くなりました。今回の例では、12/31に1BTCを10万円で購入した取引が取得原価の計算に影響を与えています。

取得原価の計算はめんどうかもしれませんが、移動平均法のほうが所得を見積もりやすく、納税資金を準備しやすいメリットがあります。

またどちらの評価方法を選択するかは仮想通貨の種類毎に選択する必要があります。

取得した仮想通貨や保有している仮想通貨を記載する必要があるため、仮想通貨の種類が多い方はお早目に準備しておいたほうがいいでしょう。

国税庁で公表している評価方法の届出手続のURLを紹介しておきます。

https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/shinkoku/annai/21kasou.htm

まとめ

仮想通貨に関する所得税法の改正の大きなポイントは2つありました。

売却額の5%を取得原価として計上できる

移動平均法を選ぶ場合は届け出が必要

仮想通貨の評価方法として移動平均法を選択するには事前の届出書が必要になりましたよね。しかも一度選択すると原則として3年間は評価方法を変えられない縛りもありました。

今回は仮想通貨の所得税法改正の一部を紹介させていただきましたが、その他の改正も仮想通貨投資家によっては重要なものがございます。弊所はスポット相談も受け付けておりますので、ご希望の方はお問い合わせからご連絡ください。

 

※当記事は2019年11月23日時点の情報に基づいて記載しております。現時点で判明している法律・通達等に基づいて記載しておりますが、正確性等を保証するものではございません。当記事を参考に何らかの行動をされる場合は、管轄の税務署・税理士をはじめとする専門家にご確認ください。

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