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暗号資産のレンディング、消費税が非課税に|現状の課税関係と非課税化のタイミング
CONCLUSION / 結論
暗号資産のレンディング(貸付け)で得られるレンディング報酬(貸借料)は、令和8年度税制改正により消費税が非課税になります。これまで「暗号資産の取引は消費税がかからない」というイメージとは裏腹に、レンディング報酬は課税対象として扱われてきましたが、今回の改正でこのズレが解消される形です。
ただし、非課税になるのは適用開始日以後の話であり、現時点ではまだ課税対象のままです。適用開始日は金融商品取引法・資金決済法の改正法の施行日を基準に定められており、現時点では確定していません(早ければ令和10年=2028年1月1日という見通しです)。
暗号資産を取引所に預けて、利息のような「レンディング報酬」を受け取る「レンディング(貸付け)」は、個人投資家にも法人にも広く利用されているサービスです。このレンディング報酬について、消費税が非課税になる改正が決まっていることをご存じでしょうか。
これまで「暗号資産は非課税のはず」という理解が独り歩きしがちでしたが、実はこれは暗号資産の「譲渡」に限った話です。レンディングで得るレンディング報酬(貸借料)は、これまで消費税の課税対象として扱われてきました。今回の令和8年度税制改正では、この課税関係が見直され、レンディング報酬も非課税となります。
ただし、非課税になるのは「いつから」なのかという適用時期の理解には注意が必要です。
本記事では、現行制度の整理と、非課税化される改正内容、そして正確な適用時期の考え方を解説します。
この記事でわかること
- 暗号資産のレンディング報酬が、なぜこれまで消費税の課税対象だったのか
- 令和8年度税制改正で何が変わるのか
- 「暗号資産適用日」とは何か、なぜ確定していないのか
- 個人投資家・レンディング事業者それぞれへの実務上の影響
1. 暗号資産の消費税、基本の整理
暗号資産の譲渡(売却)は、平成29年7月1日以後、消費税法上「支払手段に類するもの」の譲渡として非課税とされています(消費税法別表第二第二号、消費税法施行令9条4項)。法定通貨と同様の決済手段としての性質に着目した取扱いです。
POINT / 譲渡は非課税
個人・法人を問わず、暗号資産を売却しても消費税はかかりません。この点は改正前後で変わりません。なお、暗号資産交換業者に支払う売買仲介手数料は、譲渡そのものではなく仲介という役務提供の対価であるため、消費税の課税対象となります。
2. 国内取引に該当するレンディング報酬は「現時点では課税」
2-1. なぜ非課税列挙項目に該当しないのか
消費税法上、非課税とされる取引は法令に列挙されたものに限られます(限定列挙)。暗号資産の貸付けによるレンディング報酬(貸借料)は、次のいずれの非課税項目にも該当しません。
- 支払手段等の譲渡(暗号資産自体の譲渡ではなく、貸付けという役務提供のため)
- 金銭の貸付けに係る利子(暗号資産は「金銭」ではないため)
- 有価証券の貸付け(暗号資産はこれまで金融商品取引法上の有価証券に該当しないため)
このため、暗号資産の貸付けは「資産の貸付け」に該当する役務提供として、消費税の課税対象とされてきました。
2-2. 国税庁FAQでの明確化
国税庁は令和3年6月、「暗号資産に関する税務上の取扱いについて(情報)」に「暗号資産の貸付けにおける利用料」の項目を追加し、レンディング報酬が消費税の課税対象であることを明らかにしました。国内取引所が提供する「貸暗号資産サービス」などが典型例です。海外事業者やDeFiを利用する場合には、国内取引に該当するかを別途検討する必要があります。
CAUTION / 譲渡と貸付けを混同しない
「暗号資産は非課税」という理解のまま、レンディング報酬を非課税売上として処理してしまうケースが見られます。譲渡(非課税)と貸付け(課税)は別物として区分する必要があります。
3. 令和8年度税制改正でどう変わるか
3-1. 改正の全体像
令和8年度税制改正では、暗号資産の消費税法上の位置づけが「支払手段に類するもの」から「有価証券に類するもの」へ変更されます。暗号資産が金融商品取引法の規制対象として位置づけられることに伴う、法律上の根拠の整理です。改正自体は、消費税法(令和8年法律第12号)・消費税法施行令(令和8年政令第96号)として、すでに成立・公布済みです。
3-2. レンディング報酬・電子決済手段の貸付けの非課税化
この位置づけ変更に伴い、有価証券の貸付けと同様の扱いとして、暗号資産のレンディング報酬(貸借料)が非課税化されます。あわせて、電子決済手段の貸付けについても同様に非課税となります。
3-3. 課税売上割合計算での取扱い変更
暗号資産の譲渡自体は引き続き非課税ですが、課税売上割合の計算においては、有価証券と同様に譲渡対価の5%相当額を分母に算入する扱いに変わります。改正前は分母に算入しない扱いだったため、事業として暗号資産取引を行う法人にとっては、レンディング報酬の非課税化以上に影響が大きくなる可能性がある論点です。
特に、暗号資産の譲渡を頻繁に行う法人では、この5%算入により課税売上割合が下がり、本則課税を採用している場合は仕入税額控除に影響が及ぶことも考えられます。どの程度の影響が生じ得るのか、具体的な計算方法や実務対応については、別記事で詳しく取り上げる予定です。
3-4. 適用時期の考え方
法律・政令自体はすでに成立・公布されていますが、暗号資産関係の規定がいつから適用されるかは、他の改正項目とは別の定めになっている点に注意が必要です。改正消費税法施行令の附則では、暗号資産関係の規定の適用開始日を「暗号資産適用日」として定めており、その内容は金融商品取引法・資金決済法の改正法の施行日が属する年の翌年1月1日とされています。
金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律は、令和8年(2026年)7月15日に成立し、同月23日に公布されています。同法の主要な規定は、公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日から施行されますが、現時点では具体的な施行日は確定していません。
このため、金融商品取引法の改正法の施行日が令和9年(2027年)中となった場合、消費税における「暗号資産適用日」は、その翌年の令和10年(2028年)1月1日となります。金商法改正法の施行が後ろ倒しになれば、暗号資産適用日もさらに繰り下がります。
4. こんな方は要注意(実務上の留意点)
消費税の課税事業者判定に影響が及ぶ点や選択の有利不利判定に注意が必要
現状(暗号資産適用日前):課税事業者判定への影響
レンディング報酬は現時点では課税売上に該当するため、基準期間(原則として前々事業年度)や特定期間の課税売上高を計算する際、レンディング報酬の金額もそのまま算入されます。取引所のレンディングサービスを積極的に活用し、レンディング報酬だけで年間1,000万円を超える法人も実務では見られ、この場合は他の売上と合わせて課税事業者に該当するかどうかの判定に直結します。
非課税化後:課税事業者判定・簡易課税判定の見直しが必要
暗号資産適用日以後は、レンディング報酬が非課税売上となるため、基準期間課税売上高の計算から外れることになります。これにより、次のような論点が生じます。
- これまでレンディング報酬を含めた売上高で課税事業者に該当していた法人が、暗号資産適用日以後の判定期間では免税事業者に戻る可能性がある
- レンディング報酬が課税売上高から除外されることにより、簡易課税制度の適用可否や、本則課税との有利・不利の比較結果が変わる可能性がある
- 本則課税を採用している法人では、課税売上割合が下がる(3-3で解説した5%算入の影響)ことで、共通対応分の課税仕入れに係る仕入税額控除が制限される可能性がある
なお、個人投資家(消費税の課税事業者に該当しない場合)については、消費税の申告実務そのものに直接影響が及ぶケースは限定的と考えられます。
CAUTION / 簡易課税と本則課税、どちらが有利かは個別判断
非課税化により課税売上割合が変動すると、簡易課税と本則課税のどちらが有利かという判定が、暗号資産適用日の前後で変わる可能性があります。レンディング報酬の規模が大きい法人ほど影響が大きくなりやすいため、自社の課税売上高・課税仕入れの構成をもとにシミュレーションしておくことをお勧めします。
FAQ
暗号資産のレンディング報酬は令和8年10月1日から非課税になりますか?
いいえ。令和8年10月1日は暗号資産以外の項目(不動産取引の仲介等)の施行日です。暗号資産関係は「暗号資産適用日」(金商法改正法の施行日が属する年の翌年1月1日)から非課税となります。
「暗号資産適用日」とは何ですか?
改正消費税法施行令の附則で定められた、暗号資産関係の規定の適用開始日です。金融商品取引法・資金決済法の改正法の施行日が属する年の翌年1月1日とされています。
暗号資産適用日はいつになりますか?
現時点では確定していません。金商法改正法の施行が令和9年(2027年)中であれば、暗号資産適用日は令和10年(2028年)1月1日になる見通しです。施行が後ろ倒しになれば、さらに繰り下がります。
暗号資産適用日より前のレンディング報酬はどうなりますか?
経過措置により、従前どおり課税として扱われます。
暗号資産の譲渡は改正前後で消費税の扱いは変わりますか?
譲渡自体が非課税である点は変わりません。ただし、課税売上割合の計算上、暗号資産適用日以後は譲渡対価の5%相当額を分母に算入する扱いに変わります。
参考・一次資料
- 財務省「令和8年度税制改正の大綱」
- 国税庁「消費税法改正のお知らせ(令和8年4月)」
- 消費税法施行令の一部を改正する政令(令和8年政令第96号)
- 金融商品取引法及び資金決済に関する法律の一部を改正する法律(令和8年法律第64号)
暗号資産の消費税・税務でお悩みの方へ
レンディングを含む暗号資産取引の消費税処理は、施行時期の見極めを含めて判断が分かれる論点です。個別の取引内容に応じた確認をご希望の方は、お気軽にご相談ください。
【免責事項】本記事は執筆時点(公開年月)の法令・通達・国税庁FAQに基づく一般的な税務情報の提供を目的としており、特定の取引の推奨・投資助言ではありません。暗号資産関係の改正の適用時期は金融商品取引法改正の施行動向により変動する可能性があるため、最新の公表情報をご確認のうえ、実際の税務判断は必ず税理士へご相談ください。
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