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暗号資産の分離課税後も法人化は有利?既存法人の見直しポイント(期末時価評価・消費税)まで税理士が解説
CONCLUSION / 結論
国内の登録業者での取引が中心なら、分離課税(20.315%)の導入後は個人のままの方が有利になる可能性が高いと考えられます。一方、DeFi・海外取引所・NFTなど総合課税のまま残る取引が多い方や、すでに法人で取引している方は、法人の活用に引き続きメリットがあります。
- これから法人化する方:「税率」だけでなく、取引のうち分離課税の対象になる割合で判断する
- 既存法人の方:すぐに解散せず、①期末時価評価、②消費税(課税売上割合)、③個人と法人での取引の振り分け、の3点を見直す
- 見落としがちな点:分離課税の導入後は、個人の所得計算がむしろ複雑になり、経費の範囲も狭まる可能性がある
分離課税の適用開始は2028年1月1日が有力とされていますが、政省令で確定するまでは未確定です。
これまで暗号資産(仮想通貨)の利益は、原則として雑所得として総合課税の対象となり、住民税と合わせて最大約55%の税率がかかっていました。そのため、利益が大きくなった方の間では、「法人化(資産管理会社の設立)で税率を抑える」という対策が広く検討されてきました。
しかし、令和8年度税制改正大綱で暗号資産の申告分離課税(20.315%)の導入が示され、2026年7月15日には前提となる金融商品取引法等の改正法が成立しました。これにより、「分離課税になるなら法人化はもう必要ないのでは?」「すでに法人で取引しているが、このままでよいのか」というご相談が増えています。
本記事では、暗号資産税務を専門とする税理士の立場から、分離課税の導入後の個人と法人の税負担を比べるとともに、既存法人が押さえておきたい期末時価評価・消費税の論点、分離課税の導入で個人側に生じる実務上の変化まで整理します。
この記事でわかること
- 分離課税の導入で、個人の暗号資産の税金と所得計算がどう変わるか
- 利益1,000万円・3,000万円のケースで、個人と法人の税負担を比べた試算
- 既存法人の見直しポイント(特定譲渡制限付暗号資産、課税売上割合、取引の振り分け)
- 法人化を検討すべき人・個人のままがよい人の判断基準
1. 分離課税の導入で個人の税金はどう変わるのか
まず、前提となる個人の暗号資産課税の変化を整理します。詳しくは暗号資産の分離課税はいつから?でも解説しています。
1-1. 分離課税の対象は「特定暗号資産」を「登録業者経由」で譲渡した場合
令和8年度税制改正大綱では、金融商品取引業者登録簿に登録された暗号資産取引業者(仮称)を通じて行う「特定暗号資産」の譲渡等による所得について、20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税)の申告分離課税とする方向性が示されています。暗号資産デリバティブ取引や、暗号資産を対象とする投資信託(ETF等)も分離課税の対象とされる見込みです。
特定暗号資産の譲渡等で生じた損失は、特定暗号資産の所得の範囲内で損益通算でき、控除しきれない損失は翌年以後3年間繰り越せる予定です。ただし、上場株式やFX、給与所得など他の所得との損益通算は認められない見込みです。
1-2. 総合課税のまま残る取引
次のような取引は、分離課税の導入後も総合課税(最大約55%)となる可能性があります。
- 海外取引所やDEX(分散型取引所)での売却・交換
- 登録業者で取り扱われていない銘柄の売却
- ステーキング報酬・レンディング報酬・エアドロップなど、売却以外で受け取る報酬(詳しくは暗号資産ステーキング報酬の税金)
- DeFiの流動性提供・イールドファーミングなどで得る収益
- NFTの売買(一般的なNFTは特定暗号資産に該当しないと考えられます)
- 個人間(P2P)取引や、暗号資産での決済
1-3. 適用開始は「2028年1月1日」が有力(未確定)
大綱では、分離課税は「改正金融商品取引法の施行日の属する年の翌年1月1日以後」の譲渡等に適用するとされています。改正法の施行は公布から1年6か月以内とされており、2027年中に施行されれば、分離課税は2028年1月1日から適用されることになります。現時点ではこの見通しが有力とされていますが、施行日は政令で定められるため、最新の公表資料を確認する必要があります。
2. 分離課税の導入で、個人の所得計算はむしろ複雑になる
「分離課税で税率が一律になれば、計算もシンプルになる」と考えがちですが、実務上は逆の面があります。この変化は、法人で取引することの相対的なメリットにもつながります。
2-1. 譲渡のたびに「分離課税か総合課税か」の判定が必要になる
暗号資産の取得価額は、現行法上、保有している場所や取引経路にかかわらず、同じ種類の暗号資産ごとに総平均法または移動平均法で計算します(所得税法48条の2)。大綱にも、課税方式ごとに取得価額の計算を分ける旨の記載はありません。
一方で、分離課税の対象になるかどうかは、銘柄と取引経路(国内の登録業者を通じた譲渡かどうか)で決まる見込みです。そのため、同じビットコインでも、国内の登録業者での売却は分離課税、海外取引所やDEXでの売却・交換は総合課税というように、譲渡のたびに課税方式を判定し、銘柄ごとに計算した譲渡原価をそれぞれの所得に割り当てる必要があります。
取得価額を正しく計算するには、国内の取引業者だけでなく、海外取引所やプライベートウォレットを含むすべての取引履歴を統合する必要があります。課税方式の判定が加わることで、個人の損益計算の手間と誤りのリスクはむしろ大きくなると考えられます。
2-2. 所得区分の判定が必要になり、経費の範囲が狭まる可能性
現在、暗号資産の売却益は原則として雑所得とされ、取引に必要なPC・通信費・情報収集費などを、合理的な範囲で必要経費に算入する余地があります。
これに対し、大綱では「総合課税の譲渡所得の基因となる暗号資産」について、特別控除(50万円)・長期保有の2分の1課税・他の所得との損益通算を適用しないとされています。金商法改正で暗号資産の位置づけが見直されることに伴い、分離課税の対象とならない暗号資産の譲渡が、譲渡所得に該当する場面が生じることを前提とした内容と読めます。
ただし、すべてが譲渡所得になるわけではなく、営利を目的として継続的に行う譲渡による所得などは譲渡所得から除かれ、雑所得や事業所得となります(所得税法33条2項1号)。どの取引がどの所得区分に当たるかは、今後の政令等を踏まえて個別に判定する必要があります。
譲渡所得に該当する場合、所得金額は収入金額から取得費と譲渡費用を差し引いて計算するため(所得税法33条3項)、雑所得のように幅広い費用を差し引くことはできません。また、分離課税の対象となる「特定暗号資産に係る譲渡所得等」で差し引ける費用の範囲も、今後の法令等で確認が必要です。現行の雑所得と比べて、経費として差し引ける範囲は狭まる可能性があります。
2-3. 業者の報告書制度で、申告の正確性が一層問われる
大綱では、暗号資産取引業者に対し、利用者の取引内容を記載した報告書を、翌年1月31日までに税務署長へ提出することを義務付ける方向も示されています。国内の登録業者での取引は税務署が把握しやすくなり、申告内容との照合が進むと考えられます。
EXPERT NOTE / 法人は「1つの損益計算」で完結する
法人の場合、分離課税の制度は適用されず、取引経路にかかわらず、すべての暗号資産取引を一つの損益計算にまとめて法人税等を計算します。譲渡ごとに課税方式や所得区分を判定する必要はなく、事業に関連する費用は法人税法の原則(22条)に従って損金に算入できます。分離課税の導入で個人の計算が複雑になるほど、法人の「計算の一貫性」と「経費計上の柔軟性」は相対的なメリットになります。
3. 法人の暗号資産課税の基本
3-1. 法人税等の実効税率はおおむね約21%〜約34%
資本金1億円以下の中小法人の場合、法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税等を合計した実効税率は、所在地などにより異なりますが、おおむね次の水準です。
| 課税所得 | 実効税率の目安(中小法人) |
|---|---|
| 年800万円以下の部分 | 約21%〜23% |
| 年800万円を超える部分 | 約33%〜34% |
2026年4月1日以後に開始する事業年度からは防衛特別法人税(法人税額から500万円を控除した額の4%)が課されますが、法人税額が500万円以下であれば実質的な負担は生じません。
3-2. 期末時価評価:含み益にも課税される
法人が事業年度末に保有する暗号資産のうち、活発な市場が存在するもの(市場暗号資産)は、原則として期末の時価で評価し、評価益・評価損を益金・損金に計上します(法人税法61条)。個人は売却・交換するまで課税されませんが、法人は売却していなくても、期末に値上がりしていれば含み益に法人税等がかかります。長期保有を前提とする場合、法人の大きなデメリットになり得ます(回避策は6-1で解説します)。
3-3. 欠損金は10年繰越し・他の事業と通算可能
法人で生じた赤字(欠損金)は、青色申告であれば最長10年間繰り越せます(平成30年4月1日以後に開始した事業年度に生じた欠損金)。また、暗号資産の損益と、ほかの事業の損益を合算して課税所得を計算できます。個人の分離課税では、損失の繰越しは3年間、損益通算は特定暗号資産の範囲に限られる見込みです。
4. 個人と法人の税負担を比較
4-1. 比較表
| 比較項目 | 個人(分離課税の対象取引) | 個人(総合課税のままの取引) | 法人 |
|---|---|---|---|
| 税率 | 一律20.315% | 約15%〜約55%(累進) | 約21%〜約34% |
| 含み益への課税 | なし(売却時に課税) | なし(売却時に課税) | あり(期末時価評価)※例外あり |
| 損失の繰越し | 3年(見込み) | 不可 | 10年(青色申告) |
| 他の所得との損益通算 | 特定暗号資産の範囲内のみ | 不可 | 法人のすべての損益と通算可 |
| 経費の範囲 | 今後の法令等で確認が必要 | 譲渡所得に該当すれば取得費・譲渡費用のみ | 事業関連の費用を幅広く計上可 |
| 所得計算 | 譲渡ごとに課税方式・所得区分の判定が必要 | 譲渡ごとに課税方式・所得区分の判定が必要 | 1つの損益計算で完結 |
| 維持コスト | なし | なし | 設立費用・均等割・税理士報酬・社会保険など |
4-2. 試算:年間利益1,000万円・3,000万円の場合
| 年間の暗号資産利益 | 個人(分離課税) | 個人(総合課税) | 法人(役員報酬なし) |
|---|---|---|---|
| 1,000万円 | 約203万円(20.3%) | 約256万円(25.6%) | 約244万円(24.4%) |
| 3,000万円 | 約609万円(20.3%) | 約1,240万円(41.3%) | 約924万円(30.8%) |
- 分離課税の対象取引だけなら、利益の規模にかかわらず個人の方が税負担は軽い(法人の実効税率は20.315%を上回るため)
- 総合課税のまま残る取引で利益1,000万円程度だと、個人と法人の差は小さい
- 総合課税のまま残る取引で利益が数千万円規模になると、法人の方が税負担を抑えられる可能性がある

4-3. 会社のお金を個人で使うときの課税も考慮する
上の法人の税額は、利益をすべて会社に残し、役員報酬を支払わない場合のものです。会社の利益を個人で使うには、主に役員報酬か配当として受け取ることになり、どちらを使うかで税負担の構造が異なります。
- 役員報酬:定期同額給与などの要件を満たせば法人の損金となり、その分だけ法人税等は減ります(二重課税にはなりません)。一方、個人では給与所得として累進税率(最大約55%)で所得税・住民税がかかり、法人・個人の双方で社会保険料の負担も生じます。
- 配当:法人税等を差し引いた後の利益から支払われ、損金にならないため、法人税等と個人の所得税等(配当控除あり)の二重の負担となります。
また、役員報酬は原則として事業年度開始から3か月以内に金額を決め、毎月同額を支給する必要があります。損益が大きく変動する暗号資産取引では、利益が見込みを上回った部分には法人税等がかかり、下回った場合には法人の赤字と個人の課税が同時に生じるといったズレが起こりやすくなります。
POINT / 法人化の効果は「会社に資金を残せるか」で大きく変わります
利益の大部分を会社に残して再投資する場合は、法人の税率の低さを活かしやすくなります。一方、利益の大部分を役員報酬として受け取る場合、その部分は個人の累進税率で課税され社会保険料もかかるため、税率差によるメリットは小さくなります。特に、個人で取引すれば分離課税(20.315%)の対象となる利益を役員報酬で受け取ると、個人で取引するより負担が重くなる可能性があります。配当で受け取る場合は、法人税等と個人の所得税等の二重の負担が生じます。
5. これから法人化を検討する方の判断基準
| 法人化を検討する余地がある方 | 個人のままの方が有利になりやすい方 |
|---|---|
| DeFi・海外取引所・NFT・ステーキングなど、総合課税のまま残る取引が中心 | 国内の登録業者での主要銘柄の現物・デリバティブ取引が中心 |
| 総合課税の対象となる利益が年間数千万円規模 | 年間の利益がそれほど大きくない、または年ごとの変動が大きい |
| 利益を会社に残して再投資する | 利益を生活費として個人で受け取る必要がある |
| ノード運営・トークン発行・開発受託などWeb3関連の事業収益もある | 長期保有が中心で、期末時価評価の影響が大きい |
所得区分の考え方は暗号資産の所得区分、法人設立の一般的な疑問は暗号資産(仮想通貨)税務のよくある質問 ~法人設立編~もあわせてご覧ください。
6. 既存法人で暗号資産取引を続ける場合の見直しポイント
すでに法人で暗号資産取引をしている方は、分離課税の導入を機に次の3点を確認しておくことをおすすめします。
6-1. 期末時価評価は「特定譲渡制限付暗号資産」で止められる場合がある
令和6年度税制改正により、法人が保有する他者発行の暗号資産でも、一定の譲渡制限が付され、所定の手続きを行ったもの(特定譲渡制限付暗号資産)については、期末時価評価をせず原価法で評価することが認められました(法人税法61条等)。長期保有する暗号資産について含み益への課税を止められる可能性がある、実務上重要な制度です。
- 主な要件:他の者に移転できないようにする技術的措置など一定の譲渡制限が付されていること、暗号資産交換業者を通じた通知等の手続きを行っていること(日本暗号資産等取引業協会(JVCEA)の規則では、制限期間はおおむね1年以上が目安とされています)
- 評価方法:原価法が法定の評価方法。時価法を選ぶ場合は、取得した事業年度の確定申告書の提出期限までに届出が必要
- 対応状況:対象銘柄・最低数量・手数料などは交換業者ごとに異なり、変更されることもある
CAUTION / 導入のタイミングと制約に注意
特定譲渡制限付暗号資産に該当する前に生じていた含み益を、さかのぼって消すことはできません。また、譲渡制限期間中は売却できないため、資金繰りや相場変動への対応力が下がります。含み益が大きくなる前の段階で、保有目的や売却予定とあわせて検討することが重要です。なお、金商法改正に伴い、交換業者やJVCEAの規則の位置づけが変わるため、改正後の要件や手続きも確認が必要です。
6-2. 金商法改正で「課税売上割合」が下がる可能性(消費税)
暗号資産の譲渡は、現在「支払手段に類するもの」の譲渡として消費税が非課税とされ、課税売上割合の計算上、その対価は分母に含めません。令和8年度改正では、金商法改正に合わせて暗号資産の位置づけを「有価証券に類するもの」に改め、譲渡対価の5%相当額を課税売上割合の分母に算入する方向が示されています(レンディング報酬の非課税化とあわせた改正です。詳しくは暗号資産のレンディング、消費税が非課税に)。
この改正は、暗号資産の売買金額が大きい消費税の課税事業者である法人に影響します。
| 現行 | 改正後 | |
|---|---|---|
| 課税売上高 | 3,000万円 | 3,000万円 |
| 暗号資産の譲渡対価(年間10億円) | 分母に含めない | 5%=5,000万円を分母に算入 |
| 課税売上割合 | 100% | 37.5% |
課税売上割合が95%未満になると、仕入れにかかる消費税の全額は控除できず、個別対応方式または一括比例配分方式による計算が必要になります。事業用の設備投資や外注費が多い法人では、納付税額が増える可能性があります。
EXPERT NOTE / 課税売上割合の低下への対応
対応策として、仕入れを「課税売上げにのみ対応するもの」と「共通のもの」に区分して個別対応方式を適用すること、実態に即した合理的な割合がある場合には、税務署長の承認を受けて「課税売上割合に準ずる割合」(消費税法30条3項)を用いることなどが考えられます。なお、簡易課税制度を適用している法人は課税売上割合を用いないため、この改正の影響は受けません。適用時期は分離課税と同じく、金商法改正法の施行日の属する年の翌年1月1日が予定されています。
6-3. 個人と法人で、取引を振り分ける
分離課税の導入後は、「国内の登録業者での取引は個人(20.315%)」「DeFi・海外取引所・Web3事業などは法人」というように、取引の性質に応じて個人と法人を使い分けることが選択肢になります。ただし、個人と法人の間で暗号資産を移すと、その時点で譲渡益に課税される場合があるため(7-2参照)、移転のタイミングと方法は事前の試算が欠かせません。
6-4. 解散・清算は慎重に
分離課税の導入を理由に、すぐに法人を解散・清算することは慎重に検討してください。法人の暗号資産を個人に移す際には法人側で譲渡益が生じるほか、清算時には残余財産の分配が個人のみなし配当として総合課税となる場合があります。法人を維持したまま、取引の範囲や役員報酬の水準を見直す選択肢もあわせて比較することをおすすめします。
7. 判断するタイミングと進め方
7-1. 分離課税の施行前(2027年分まで)は現行どおりの総合課税
分離課税が2028年から適用される場合、2026年分・2027年分の利益は、個人では引き続き総合課税となります。施行までの期間だけを考えれば法人化が有利になる可能性もありますが、設立・維持のコストや、施行後に法人を続けるかどうかまで含めて、数年単位で比較することが重要です。
7-2. 個人で保有している暗号資産を法人に移すときの注意
個人で保有している暗号資産を自分の法人に譲渡・贈与すると、その時点で個人に所得が生じます。現行制度では、時価より著しく低い価額で譲渡したり、無償で移したりした場合でも、時価を基準に課税される場合があります(所得税法40条等)。分離課税の導入後、暗号資産が譲渡所得の基因となる資産に該当する場合には、法人への贈与や低額譲渡についてみなし譲渡(所得税法59条)の規定が問題となる可能性もあります。また、個人から自分の法人への直接の移転は、「登録業者を通じた譲渡」という分離課税の要件を満たさない可能性があり、施行後の取扱いは今後の法令等で確認が必要です。
7-3. 判断のためのチェックリスト
- 過去2〜3年分の取引を、分離課税の対象になりそうな取引と総合課税のまま残る取引に分けて集計する
- 今後の取引方針(国内の登録業者中心か、DeFi・海外取引所中心か)を整理する
- 年間の利益の見込みと、個人で受け取る必要がある金額を把握する
- 法人で長期保有する暗号資産について、期末時価評価の影響と特定譲渡制限付暗号資産の活用可否を確認する
- 消費税の課税事業者である法人は、改正後の課税売上割合を試算する
- 設立・維持のコスト(税理士報酬・均等割・社会保険料等)を含めて、数年単位で比較する
8. よくある質問(FAQ)
分離課税が始まったら、暗号資産の法人化は意味がなくなりますか?
国内の登録業者で現物取引を行うだけであれば、個人の分離課税(20.315%)の方が、法人の実効税率(約21%〜約34%)より低くなる可能性が高いと考えられます。一方、DeFi・海外取引所・NFT・ステーキングなど総合課税のまま残る取引が中心の方や、利益を会社に残して再投資する方にとっては、法人を活用する意味は引き続きあると考えられます。
法人でも20.315%の分離課税は適用されますか?
適用されません。分離課税は個人の所得税の特例であり、法人の暗号資産の利益には通常の法人税等がかかります。
分離課税はいつから適用されますか?
大綱では「改正金融商品取引法の施行日の属する年の翌年1月1日以後」の譲渡等に適用するとされており、2028年1月1日からの適用が有力です。施行日は政令で定められるため、最新の公表資料をご確認ください。
法人の期末時価評価を避ける方法はありますか?
一定の譲渡制限を付し、交換業者を通じた手続きを行った「特定譲渡制限付暗号資産」は、原価法で評価でき、期末時価評価の対象外とすることができます。ただし、それ以前に生じた含み益は消せないこと、制限期間中は売却できないことなどの制約があるため、事前の検討が必要です。
金商法改正で、法人の消費税に影響はありますか?
暗号資産の譲渡は引き続き非課税の予定ですが、譲渡対価の5%相当額が課税売上割合の分母に算入される方向です。売買金額が大きい課税事業者の法人では課税売上割合が下がり、仕入税額控除が減る可能性があります。簡易課税を適用している法人は影響を受けません。
すでに暗号資産の資産管理会社を持っていますが、解散すべきですか?
すぐに解散することはおすすめしません。法人の暗号資産を個人に移す際や清算時に課税が生じる場合があるためです。取引の振り分け、期末時価評価や消費税への対応を含めて、維持・縮小・清算を比較検討することをおすすめします。
分離課税になると、個人の確定申告は簡単になりますか?
必ずしも簡単にはなりません。同じ銘柄でも取引経路によって分離課税と総合課税に分かれる見込みのため、譲渡ごとに課税方式を判定し、すべての取引所・ウォレットの履歴を統合して取得価額を計算する必要があります。また、所得区分によっては、経費として差し引ける範囲が狭まる可能性もあります。
個人で持っている暗号資産を法人に移すと、税金はかかりますか?
個人から法人への譲渡・贈与は、その時点で個人に所得が生じます。時価より著しく低い価額や無償で移した場合でも、時価を基準に課税される場合があります。含み益が大きい場合は、移転の時期と方法を事前に検討することが重要です。
9. 参考資料
分離課税の導入後、法人の活用に迷ったら
ホワイトテック会計事務所は、暗号資産・NFT・DeFi・Web3の税務を専門とする税理士事務所です。お客様の取引履歴をもとに、分離課税の対象になる取引と総合課税のまま残る取引を整理し、個人と法人の税負担を試算します。法人の新設だけでなく、既存法人の期末時価評価・消費税の見直しや、清算のご相談にも全国オンラインで対応しています。
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